反政治の名言コーナー

①勢古浩璽『思想なんかいらない生活』、ちくま新書、筑摩書房、2004年

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p266
いい加減な政治家がまた当選してくる。われわれ一人ひとりにあるのは、

たった 「一票」 の投票権だけである。この無力さは想像を絶する。<後略>




日本の選挙での投票率が低迷を続ける事態を

憂える方たちは、再考して頂きたいものです。

投票をうながすキャッチフレーズが、折に触れて

日本各地で募集され、発表されてもきましたが、

効果のほどは疑わしくあり続けました。

自分が誰に投票しようがしまいが、結果は同じでしかない、

「清き一票」の実態へと正面から向き合わずに、

投票率低迷の抜本的かつ長期的な解決策を

求めても、結局のところ、無いものねだりにならないでしょうか?

そして「庶民にとっては基本的に生涯無縁の言葉であり、

それどころか、かれらの集まりのなかで使うにはほとんど

赤面ものの言葉でもある。」(同書、pp8-9)と歯切れよく

断ぜられる著者・勢古氏の指摘された「思想」とは異なる、

庶民が使い勝手よく、赤面しないで済むような「思想」を提供すべく、

私は精進した次第です。みなさま方、結果をごろうじ下さいませ。



②井波陵一訳『新訳 紅楼夢 第三冊(全7冊)』岩波書店、2013年

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p210:第42回、括弧内は原文のルビ

男の方々は書物を読んで道理を明らかにし、

国を輔(たす)け民を治めてこそ立派なのです。

でもいまどきそんな方がいらっしゃるなんて

聞いたこともありません。

それどころか書物を読んで、逆に一層悪くおなりです。<後略>




アジアの長編小説の中で、唯一、累計発行部数が

世界市場のベスト10入りを果たした事実を、

インターネットで容易にチェック可能な作品。

それが『紅楼夢』であり、清朝時代の中国に旋風を巻き起こし、

中華民国の時代からは、中国人の民族的自尊心と結合しました。

優れた文学作品の例にもれず、さまざまな読み方が可能であり、

日常生活の描写に叙述が偏りながら、愛好者の萌え心と

知的好奇心の、少なくともいずれかを呼び起こし続けています。

かつ、特に外国人からすれば、愛好者を露骨に選ぶ作品とも

言えるでしょう。

リアリズムの描写は共通でも、その『源氏物語』が及ばない

「ファンタジックな設定と耽美性」を有した作品です。

また実際、清代の中国で実在したはずの、頭が良すぎる

女性たちの価値観は、現在の世界にも通ずるものが

多々、認められます。

中国の伝統社会では、「読書人」と称された男性知識人たちに

比肩する「美少女たちと美女たち」が、人類の未来に示唆を

与えもします。

さて、古今東西、そして未来に渡り、学歴や読書量、勉学などの、

これら積み重ねがです。

たとえ民主主義の世の中だろうが政治と切り離せない、

作中の重要人物の一人にして、男性中心社会を

冷たく見すえる美少女・薛宝釵の表現に従えば、

「民を治めてこそ立派」という意味で、民の上に立つ存在と言える、

そんな為政者たちの統治能力を、明確に保証してくれる

ものなのでしょうか?



③朝日新聞、2013年7月10日付、11面記事
ブータン王国の国旗

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記事タイトル:幸せ探るブータン

今月13日、47小選挙区に2大政党が立てた

候補者への投票がある。<後略>

選挙戦では非難の応酬も目立ち、和を重んずる

ブータン社会に「うんざりだ」という空気が広がる。

<中略>キンガ・ツェリンさん(47)は「民主主義は

狭い社会に対立を持ち込む。人々にとって居心地の

良いものではないようだ」と感じている。

記者の取材に応じた有権者の多くは 「王政の方が

いいと思うけど、 (先代の) 王様が民主主義を

始めたんだから仕方ない」(23歳の図書館司書、

ソナム・ラモさん) と異口同音に語った。<後略>

    (プナカ県=庄司将晃)




政策や政治家の評価をめぐって、国民のあいだに

隔たりが生じたりします。「民主主義のコスト」という

言葉が流通してもいます。

そもそも、政治のことなんて考えなくても生きていけるのに、

という発想からすれば、国家の立場ばかりか個人の立場

からしても、民主主義に積極的な意義が

認められなくて当たり前ではありませんか?

為政者に政治をお任せして、なにが悪いというのでしょう。

しかし、それでも私としては、譲れない一線が残されています。

もし、民主主義そのものの代案が分からないのであれば、

そしてどの代案も正当性を満たせないと考えるのであれば、

願うべき政治思想はひとつ。民主主義を阻害せずに、

付きまとう弊害を可能な限り阻止する、そんな思想を

組み込んだ政治思想ではないでしょうか?

かの民主主義の理念が広まる以前から、人間の世界に

政治は付き物でしたし、そこでも政治の理想像は、

語られていました。

時代と空間を越えて、民主主義と共存すべき思想が

見い出され、日本の内外で広まるべきと信じます。



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